闇もどき部屋へようこそ
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マンションに着いた。
カガリはソファに崩れるように座り込んだ。
愛人は愛人でしかない。それ以上を望むのは可笑しなことーー。
カガリは自分が想ってた以上に凄くアスランを好きになっていたことに気づかされた。
ぼーとする頭で、今夜はエリカさんとーー、そう思ったら知らず涙が零れ落ちた。
‥‥夜は特別な女性を抱いて、朝は自分がスッキリしたいため、ただそのためだけに私を抱いたーー。
一緒に食事をして‥‥一緒に食器を洗ったり‥‥どこかアスランも楽しそうに見えたのは私の気のせいだったみたい‥‥浮かれてた自分がバカみたい‥‥あはは‥‥。
もうアパートへ戻ろう。空き巣の件は怖いが、そうは言っていられない。
カガリは部屋に行き、荷物を纏めだした。元々持ってきた荷物はたかが知れている。あの買ってもらったパーティードレス一式はクローゼットに置いていくことにした。見ると嫌でもアスランのことを思い出すからだ。
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時計は23時15分。バスは既にない時間帯だったが電車はまだ何本か動いていた。だから電車で帰ることにした。ただ電車だと降りた駅からかなり歩くことになる。
黙って帰るのはいくら何でもよくないからと、手紙を残しておくことにした。いったんリビンに纏めた荷物(キャリーバッグ)を置いて、メモ用紙を探した。アスランの部屋に勝手に入るわけにもいかず、手ごろな紙はないかとカバンの中を探っていれば、玄関のドアが閉まる音に気付いた。アスランが帰って来た。
ーー泊って来るんじゃなかったのか!?ーーどうしよう。会いたくない!とカガリはこの事態に焦った。
そこへ、キッチンへ寄ってから、アスランがリビングに姿を見せた。
カガリはアスランに背を向けて急ぎ部屋に逃げ込もうとしたが、焦るあまり置いてた荷物に足を引っかけこけてしまった。
アスランはカガリのまとめた荷物に気付き、それを見て眉を顰めた。
「どういうことだ?」
カガリはぎこちなく立ち上がると、背を向けたまま、言葉を口にした。
「‥‥あっあのな‥‥ほとぼりも冷めたと思うからそろそろアパートに戻ろうかと思って‥‥今までありがとう‥‥」
そう伝えて、カガリは荷物を持って玄関へ行こうとすれば、背後から意味が分からない言葉を投げつけられた。
「笑える」
カガリは疑問符を抱き振り返れば、アスランは薄笑いを浮かべ、人を嘲笑うかのに見つめていた。
「‥‥なっ何?」
その問いには答えずアスランは冷めた顔でカガリに歩み寄れば、いきなりカガリの片腕を掴むと、雑な勢いのまま背中を壁に押し付けた。そしてアスランは壁に両手を力強く叩きつけカガリを囲んだ。
カガリは背中に痛みを感じた。アスランにこんな乱暴な扱いをされたことなど今まで一度もなかった。だからアスランがかなり怒っていると言うことだけは分かった。しかし、なぜ怒っているのかはわからなかった。
カガリはアスランの態度に反発するかのように、睨んで怒った声で言った。
「ーーいきなり何をする。痛いだろう!」
カガリはムッとした顔で言い返した。
「何のことだ?」
「キャバクラで働いていたんだろう。なら男を落とすことには手慣れていたよな。俺に近寄ったのも本当は計算づくだったんじゃないのか?」
アスランがキャバクラのことを知っていたことにカガリは驚愕した。
「俺としたことが処女だったからつい油断させられたな」
そう言うとアスランは顎を掴んだまま、鬱憤を晴らすかのようにカガリに口づけた。そして、唇を離しカガリを見れば、泣きそうな表情を浮かべていた。
なぜかその顔がアスランを更に苛つかせ、険しい顔つきを見せた。
カガリはぎゅっと目を閉じた。そして、目を開けると言った。。
「・・・もうやだ!私に触れるな!さっきまでエリカさんを抱いてたくせに」
そう喚くと、両手でアスランの胸を叩き暴れ出した。
アスランは驚き、掴んでいた顎から手を離した。
「なんでエリカを知っている?」
カガリは両手の拳をアスランの胸に押し当てたまま、俯いた。
ーー見てしまった車中でのアスランとエリカさんの行為。私は本当に馬鹿だ。アスランの優しさに自惚れていた。──もう無理。アスランを好きと認めてしまった以上、もう気持ちを誤魔化すことは出来ない。愛してもらえないと分っていながら、抱かれる辛さ。こんな愛人関係はもう嫌だ!
「答える気はないかーー」
アスランは暴れる両手を掴み、カガリを冷たいフローリングの床に押し倒した。そして、カガリの上で四つん這いになると上着を脱捨て、ネクタイを緩めた。
「出て行くお祝いに抱いてやるよ」
カガリは抱こうとするアスランの手を拒絶した。
「──男の元へ行くから、俺は用済みと言うことか」
出て行くなら勝手にすればいいと思いながらも、アスランはなぜか無性に腹が立った。
「もう、おまえとの愛人関係は終わりだ!」
カガリが発した一言で、アスランの中の怒りが頂点に達した。
2023年5月18日 修正済