闇もどき部屋へようこそ
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<次の朝>
アスランが帰宅してないことに気づいた。
‥‥もしかして会社で倒れてたりしてないよな?
不吉なことが頭の中を過ぎりカガリは居ても立っても居られず、慌てて携帯を手に取った。だがそこで不意にあることを思い出した。ーー女性は自分だけじゃないってことだ。当たり前のように帰宅するアスランに、その存在を忘れかけていた。
カガリは携帯を握りしめたままソファに座り込んだ。
ざわつく気持ちのまま床を見つめていれば、ドアフォンが鳴った。
その音に驚きながら、朝から誰だ?と思うと同時に時計を見ればまだ9時前だ。
どこか恐る恐るモニター画面を見れば女性だった。
勝手に応対していいのかと迷ったが、もしかしてアスランのことで何かあったのかもしれないという心配な気持ちから、応対することにした。
相手は秘書と名乗る女性だった。
そう言われてよく見ればその女性には見覚えがあった。あっ‥‥と思い出した。そうあの時(アフメドと付き合いだした頃)アスランと一緒に居た女性だった。
ーーそうかアスランの秘書だったんだ。
**
玄関の中へ入ってもらった。
「突然伺ってごめんなさいね。エリカ・シモンズと申します。出てくれないかと思ったけど会えてよかったわ」
「もしかしてアスランに何かあったのか?」
カガリは心配のあまり相手に詰め寄った。
エリカは少し驚く素振りを見せるも、優しい笑みを浮かべて落ち着いた口調で話しかけた。
「副社長は何もありまあせんのでご安心してください」
カガリはその言葉を聞いて安堵の表情を浮かべた。その様子を見てエリカは話を続けた。
「まずはあなたのお名前を伺ってもよろしいかしらん」
「‥‥あっ私はカガリ・アスハといいます。‥‥もしかして昨日アスランの忘れた物を会社へ届けけに行ったから、そのことで何か変な噂が立って、それで秘書さんが確かめにここへ来たってことですか?」
「えっ?」思ってもみない事を言われてエリカは驚いた顔を見せた。
カガリは頭を深く下げて謝る姿勢を見せてから話し出した。
「すみません。違うんです。その彼女とかそんなんじゃないんです。私に事情があってここにしばらくの間住まわせてもらっているだけなんです。そのことで何か迷惑をかけたのなら謝ります。すみませんでした」
エリカはどこか呆気にとらわれたような顔を見せるも、小さく笑みを浮かべた。
「‥‥そんなことがあったの?知らなかったわ。どうせ副社長が無理を言って忘れ物をあなたに届けさせたのでしょう。それで変な噂が立ったとしてもそれは副社長の自業自得だから気にすることないわよ」
そう言い切るエリカの態度にどこか凄い人だと本能的に魅力を感じた。流石はアスランの秘書だけはあると思った。
「変な噂なんてないから気にしないで。今日私がここに伺ったのは、雲隠れしていた理由を確かめたくて来ただけよ」
「‥‥雲隠れ、なんですかそれ?」
エリカは一人納得したような笑みを浮かべると言った。
「うふふ‥‥あなただったのね」
「‥‥‥‥?」
「副社長は急遽社長の代わりに出張が決まったの。もう既に出かけて会社にはいないわ。帰宅は明後日よ」
「えっそうなんですか。昨日帰って来なかったからちょっと心配だったんだ」
「ーー帰って来なかったの?」
「‥‥‥昨日から出張ってことですよね」
カガリは忘れ物を届けた後、アスランは出張に出かけたと思った。
エリカはカガリの勘違いに気づいたがあえて否定はしなかった(出張は今日だ)。そしてカガリを問うように見つめて言った。
「じゃあの後(エリカの部屋を出た後のこと)、副社長はどこへ行ったのかしらんね?」
「えっ?」
カガリはエリカの問いかけに疑問符を浮かべた。どういう意味なんだ?
エリカはどこか悪戯っほい笑みを浮かべると言った。
「気になる?なら自分の目で確かめてみてはどう?」
「あのーーどういう意味でしょうか?」
エリカはカバンからメモ用紙を出すとささっと何かを書き出した。そして書き終えるとそれをカガリに手渡した。
「はいこれ」
そのことには答えず、ただ言った。
カガリは理解できず戸惑った顔でエリカを見つめた。
「忙しいところ、ごめんなさいね」
そう言ってエリカは帰って行った。
**
ーー結局エリカさんは何のためにここへ来たんだ?そう思いながら、渡されたメモ用紙を改めて見てみた。
住所と日時が書いてあった。流石は時間に細かいと思った。時間指定と書かれていた。そのタワーマンション内にある駐車場に来てと。そこには大きな木、今は葉桜となった木の後ろに隠れて待つようにと書かれていた。木の場所がわかるように地図も書かれていた。
‥‥どういうことなんだ?‥‥大体なんで私がそんな所へ行かないといけないんだ。その時間は仕事中だし‥‥だから行かない、絶対に行かない!‥‥けどこの日って確かアスランが出張から帰って来るって言ってた日付だよな‥‥。
**
エリカはマンションのエントランスから出て、彼が住むマンションの部屋を見上げた。
素直で可愛いらしい方。だから少し意地悪をしたくなっちゃった。これくらいの試練を乗り越えられないようならアスランとはやっていけないわよ。
そして、会社へ帰るためタクシーを拾い、乗り込んだ。
タクシーが走り出して運転手に一言尋ねてから、煙草を取り出し吸った。フーと煙をふくと、窓から流れる景色を見ながら、色々と思い返していた。
──ここ最近、会社でのアスランの様子が変わった。本人は気づいてないようだけど。
副社長室で椅子に座っている彼がいきなりクスクスと笑うことがあった。表情を表に出さない彼を良く知るエリカにとって不思議な光景だった。
夜、仕事関係の接待を受けた後は、いつもなら気分転換と言って、一人で高級なお店のバーに出かけ、声を掛けて来る女性とその日の気分でホテルへ行くことがお決まりだったが、最近はそれをせず、終わればさっさとマンションへ帰っていった。おかしいと確信したのはお嬢様方からの問い合わせだった。
ママから聞いたと言うイ〇ポの話はエリカのその場の作り話だ。そうでもしないと雲隠れの話が収まりそうもなかったからだ。
──やはりそう言うことだったのね。人と一緒に住むのは疲れるから嫌だと言っていたのにね。
エリカは煙草をふかした。
**
<夜>
マンションでは、一人寂しくアスランの帰りを待つカガリの姿があった。
こんなに会わない日があっただろうか?会えないとわかると余計に会いたくなる。・・・会いたい気持ちが募る。あの優しい腕に抱きしめられたいと、彼を求める自分がいた。
カガリはベッドの中で、アスランを想って初めて一人でやってみた。ーー自慰行為だ。
アスランの温かい腕に包まれて昇り詰めたい。自分の花びらを指で触れるのはどこかもどかしく感じた・・・。
──あっ・・・アスラン・・・。声にならない言葉を噛み締めた。
アスランがくれる快楽が欲しい。アスランが触れる指先を思い出しながらカガリはゆっくり指を入れてみた。物足りない感覚に全然満たされない虚しさを感じて直ぐにやめた。そして、急に恥ずかしさがカガリを襲った。
2023年5月10日 修正済