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secret crescent

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小説「素直になれなくて」30話


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アスランは泣き止んだカガリに問いかけた。

「落ち着いたか?」
「////泣き過ぎて顔が変になった」

その言葉に、アスランは小さく笑う。

「その変顔、見せて見ろ」
「////もう変顔って言うな!」

少しむくれた顔で見上げれば、アスランが顔を寄せ、唇を塞いだ。気持ちが通じ合ってからの初めてのキスだった。

甘い口づけに酔いしれるカガリだったが唇は離れ、自分を見つめるアスランと目が合った。////カガリはもっと触れて欲しい、と思った。しかし、アスランはその気がないのかどこか素っ気なかった。

「どうした?」

淡々と問うアスランの声に、カガリは自分一人だけが盛り上がり欲情してしまったと、気恥ずかしく思い、カガリはアスランから目を逸らし、顔を洗ってくる、と伝えると、慌てて直ぐ横にあるパウダールームに足を踏みいれた。すれば、つるっと滑りこけそうになったが、背後にいたアスランが咄嗟に支えてくれたので無事だった。

そう床が水浸しだった。その原因はカガリだ。

アスランはこの惨状を見て、推測でしかないがほぼ理解した。

「大丈夫か?」
「//ごめん。大丈夫だ」

カガリを立たせるとアスランが言った

「部屋を出るから支度をしろ」
「‥‥えっうん、わかった//」

カガリはどこか寂しい気持ちを切り替えて、今度は足元に注意をしながら洗面台に行き顔を洗って、言われた通り、身支度を整えた。そして、カバンを手に持つと、玄関前に向かった。

アスランは客室にある電話でフロントに連絡を入れていた。

カガリが玄関前で待っていれば、アスランが着ていた上着を脱いでカガリの肩にかけた。

「えっ、いいよ。大丈夫だから」
「いいから、着ろ」

ーーシャツがまだ濡れていたからだろう。

「じゃ遠慮なく。ありがとう////」

カガリは上着の袖に腕を通して着た。ーー温ったかい////。


 **


アスランがフロントで支配人と話し終えると、フロントから出て来きた支配人とボーイに頭を下げられ、ご丁寧に見送られた。

外に出れば濡れたシャツのせいか、空気が冷たく感じたが、アスランと繋いだ手はぬくもりを強く感じた。

「ごめん、パウダールームの件もそうだが色々あっただろう。何を言われたんだ?」
「俺が話をつけておいた。だからその話は終わりだ。わかったか」
「‥‥う~ん、迷惑かけてごめん」

そしてどこへ行くのかと思えば、道路を挟んだ所にある建物だった。

「ここで待ってろ。荷物を取りに行ってくる」と言われた場所はロビーだった。辺りを何気に見回せば、ここはビジネスホテルだと気づいた。

少し待てば手に荷物(カバン)を持ったアスランが戻って来た。

「もしかしてここで泊まっていたのか?」
「ああ」
「マンションに帰ることが出来ないほど、忙しかったんだ。そんな時に迷惑かけちゃってごめん」

カガリは済まなそうな顔を見せた。

アスランはどこか気まずそうな顔を見せたがカガリは気づいていなかった。

「‥‥別に謝るほどのことじゃない。それよりさっきからカガリは謝ってばかりじゃないか?」
「‥‥あっ確かに」

アスランは少し呆れ気味に、カガリの頭を軽くポンポンと叩いた。

「ほら行くぞ」

そして、地下室に向かえば、駐車場があって、そこにアスランの車があった。

車の後部座席につい目がいき、不意にエリカさんを思い出し、見てしまったアスランとのキスが頭の中を過った。

アスランが助手席のドアを開けた。しかし、カガリは呆然と突っ立ていた。

「何してる?」

カガリはその声で慌てて乗った。そして、腰を下ろせば、気持ちを落ち着かせるかのように小さく息を吐いた。

動く車の中でカガリは、そっかーー、とあることに納得した。それはアスランがビジネスホテルに居たからプラントホテルに早く来れたのだと。ーーもしマンションからだったら早くは来れなかった‥‥そう考えると、なんだか急に怖くなった。

 

**

<マンション>

車に乗ってからどこかカガリの様子がおかしかったが、久々だから少し緊張でもしているかと、アスランはそう思った。

慣れているはずのリビングに来たカガリだが、やはりどこか落ち着かないのか、急にキッチンへ行き、冷蔵庫を開けた。

「あああーーなんでケーキが残っているんだ?もう期限が切れてるだろう!」
「‥‥‥‥」

カガリはぶつぶつ言いながら、今度は洗面所へ向かい、洗濯機のふたを開けた。

「洗って乾いたはずのシーツが出してないじゃないか!」

アスランも何か察した。緊張とかじゃない別の何かだとーー。

「カガリ、どうした?」

カガリは答えることなく、

「使っていた部屋を見てくる」

なぜかアスランを避けているかのようだった。

アスランはカガリの腕を掴んだ。

「な、なに?」
「言いたいことがあれば言えばいいだろう」

カガリは驚く顔をして、俯いた。

「‥‥エリカさんとはどうなったの?」
「どうもこうもない。エリカとは仕事上の関係だ」
「嘘つかなくてもいいだろう。私、見た。‥‥アスランとエリカさんがキスしているところを」
「ーーだから?もっと詳しく話して欲しいのか?」
「そんなこと言ってない!」

アスランは大きくため息を吐いた。

「だから女は面倒くさい」

カガリはムカつき、掴む腕を振り払い、アスランに背を向けて玄関に歩き出した。

だがアスランも直ぐ後を追って、カガリの腕を掴み、歩みを止めた。そして、カガリを囲うように廊下の壁に手を突いた。

「カガリ!」
「‥‥面倒で悪かったな‥‥だって込み上げるこの気持ちをどうしたらいいのか、私だってわかんないんだからしかたないだろう!!」

怒った泣き顔でアスランを見上げた。


2023年9月27日 修正済

 


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