闇もどき部屋へようこそ
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ハイネはどこか緊張している様子のカガリに話しかけた。ーー本当はそんなカガリを優しく抱きしめたいと思ったハイネだったが、ここで抱きしめたらそのままベッドへ押し倒してしまいそうだったので、ここは我慢した。
「シャワー浴びる?」
カガリはカバンをぎゅっと手で握り締めて、首を横に振った。
「じゃ、俺はシャワーを浴びてくるから少し待ってて」
ハイネはカガリの頬に軽くキスをするとシャワールームへと行った。
客室はグレードを上げて予約しておいた。だからユニットバスではなくトイレとお風呂は別々だ。パウダールームも通常の部屋とは違い広く、そして、バスタブも大きかった。これなら二人でも十分入れる。後でカガリと入ろうと考えた。
ハイネはお風呂の中でのイチャイチャを連想してニヤケ顔になった。あんなことやこんなこと、と言うような妄想を膨らませていたが、そこで漸く思い出したように、シャワーを浴びだした。
‥‥何十年ぶりだろうか、一人の女性を純粋に愛そうとするなんてーー。
そう思うと自分が青臭い学生のように思えて来て、ハイネは苦笑いを浮かべた。
今日は頭の天辺から足の爪先まで念入りに洗うことにした。だから少し長めのシャワータイムとなった。
**
<その頃カガリは>
ハイネの姿が見えなくなると、カガリは力が抜けたかのように、ベッドの端に座り込んだ。そして、膝の上にあるカバンを手で握り締めたまま、一点を見つめ、ただぼーとしていれば、突然カバンの中の携帯が鳴り、電話だと知らせた。
はっと我に返ると、慌てて携帯を取り出し、誰だ?っと相手を確認すれば、アスランからだった。カガリは驚き、胸の高鳴りと同時に硬直した。‥‥なっなんでこんな時に‥‥。
鳴る携帯を見つめ、出ることに躊躇ったが、やはり無視はできないと、動揺する気持ちを抑えて電話に出た。
『
なぜか声を聞いただけで今にも泣きそうになった。カガリはそれを悟られないように気丈に振る舞い、言葉を返した。
『‥‥なっなんで答えないといけないんだ、もう関係ないだろう!』
『‥‥会いたいーー』
‥‥えっ!?カガリの心臓の音が早くなる。だが同時に怒りも湧いてきた。
『‥‥何を言っている‥‥意味がわかんない‥‥だってお前にはエリカさんがいるじゃないか‥‥それにもう私はおまえの愛人じゃない!』
『あ~だこ~だと煩い。俺が会いたいと言っている!』
自分から会いたいと言いながら、どこか切れたように怒るアスランの声にカガリはムカついてきた。
『もう話すことなんてないから切る!』
『ホテルかーー』
ーーその言葉に驚き心臓が、ギュッと締め付けられた。どうしてわかったんだ?カガリはなぜか自分が悪いことをしているような、後ろめたい、そんな気分になった。
『どこのホテルだ?』
人の気持ちも知らないで、ズケズケと聞いてくるアスランに、カガリは自棄になって答えた。
『‥‥プラントホテル。今、彼と一緒に居る』
『今からそこへ迎えに行く』
『‥‥はあ、人の話を聞いてなかったのか?何バカなことを言っている!』
『一階のロビーで待っていろ』
『ーー何勝手なこと言っている。行くわけないだろう!』
『なら部屋まで迎えに行く。部屋の番号はなんだ?』
『‥‥本気で言ってるの?』
『ああ、本気だ』
『ーー‥‥そんなに言うのなら、私がどの部屋にいるのかアスランが探して来て』
カガリは無茶を承知でアスランに言った。例え来たとしてもホテル側も簡単に教えたりはしない。特にプラント・ホテルはーー。
もし、ホテル側が教えるとすれば、アスランの肩書きを聞いた上だろう。だけどアスランは自ら肩書きをひけらかすような行為は絶対にしない。彼がそう言った行為が嫌いなことは知っている。
アスランが黙り込んだ。そして、硬い声で答えた。
『───‥‥それは無理だ』
『うん。わかってる』
そう言って、カガリは電話を切った。
**
パウダールームからバスローブを着たハイネが姿を現し、カガリに歩み寄った。
「ーー誰かと話してた?なんか話し声のようなのが聞こえてきたけど‥‥」
カガリはハっと顔を上げて今の状況を思い出した。
「‥‥あっ‥‥えっと、たぶんラジオをじゃないかな?ベッドについてるスイッチを触っていたから」
そう言うとカガリはベッドの上にあがり、四つん這でヘッドフレームまで歩き座り込んだ。そして、スイッチを指差して言った
「これ!」
そう言ってからスイッチに触れた。すると明るかった部屋がいきなり薄暗くなった。照明のスイッチだったようだ。
カガリは驚いて、慌てて戻そうとスイッチに手を伸ばせば、背後からハイネに抱きしめられ、明るさを戻そうとした手はハイネの手により止められた。
「このままでいいんじゃないか?」
「//////‥‥!」
「カガリ好きだ」
ハイネはカガリの首元へキスを落とした。
「//////‥‥」
──私はハイネと付き合うと決めた。だからもうアスランとは会わないと決めた。だからこれでいいんだ。
ハイネはカガリをベッドの上で仰向けにすると自分はその上で四つん這いになってカガリを見下ろした。
「嬉しすぎて優しく出来ないと思う。だから覚悟しといてくれよ」
ハイネは少し気障っぽく言葉にすると、カガリの額、頬、そして、唇に啄むキスをした。それから口づけを貪りながら、ハイネの手はカガリのシャツの下に潜り込み、柔らかな肌を堪能するように動きだした。
2023年6月6日 修正済