闇もどき部屋へようこそ
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
<次の日の夜>
仕事が終わり、ロッカールームで帰る準備をしていればハイネからメールが入った。
『電話、今大丈夫か?』
なんだろう?と思いながら電話が出来ることをメールで伝えれば、直ぐに携帯が鳴った。
ハイネの電話は、ラーメンの無料券を営業先の人から貰った。けど期限が今日までだった。捨てるのももったいないと思って、カガリに連絡を入れた、と言う話の流れだった。
『俺も仕事が終わって、今偶々カガリの仕事場の近くに居る。行くなら車だからこのまま迎えに行くがどうする?』
『無料券を捨てるなんてもったいないじゃないか!』
『なら決まりだな。後5分くらいで着くからバス停の手前で待っててくれ』
『わかった』
**
<走る車の中>
「昨日、カガリの仕事の場所を聞いててよかった」
そう話すハイネにカガリは笑みを浮かべた。
「‥‥それでどこのラーメン店なんだ?」
ハイネはポケットから無料券を取り出してカガリに渡した。
カガリは受け取ると、その券に書かれたラーメン店の名前を見た。
「えーー!?これってあの美味しいと評判のラーメン店じゃないか!」
**
無料で美味しいラーメンを食べてご満悦のカガリだったーー。
「ラーメン一杯で凄く幸せそうな顔をしてるぞ」
「そりゃそうだろう。今日、誘ってくれてありがとうな」
「そう言われると安心した」
「なんで?」
「昨日会って今日もだろう。しつこい男だと思われないかと心配だったんだ」
「アハハ‥‥そんなわけないだろう」
二人はラーメン店と同じ敷地内にあるゲームセンターで少し遊んだ。
**
「‥‥楽しかった。声を上げて遊ぶの久しぶりだったなーー」
そう言って笑う顔を見せるカガリにハイネが言った。
「‥‥どこか無理してはしゃいでいなかったか?」
「そんなことあるわけないだろう。本当に楽しかったんだから」
「そうか、ならいいけど」
そう話しながら二人は車に乗った。
「じゃ帰りもよろしくお願いします」
とカガリが言えば、ハイネはカガリを見つめて言った。
「昨日の返事、聞かせて」
「えっ?」
「まさか俺の告白、忘れたわけじゃないよな?」
カガリは顔を赤くして少し気まずい顔を見せた。ーー前に進もうと思った。だからハイネと付き合うのもありかと確かにそう思った。‥‥けど、どうしても吹っ切れない自分がいて、だから返事に迷い悩みだしてしまった。
「‥‥友達としてはダメかな?ハイネのことは嫌いじゃないんだ。こうやって会って話したりするのは楽しいし」
「ーー誰か好きなやつとかいるのか?」
カガリは小さく頷いた。
「‥‥ごめんなさい」
「ーーじゃ聞くけど、その男とは上手くいきそうなのか?」
カガリは俯き首を横に振った。「全然ない」と言い切った。
ハイネは安心したかのように小さく息を吐いた。
「ーーだろうな。だから(昨日)キスを拒むことはしなかった‥‥。もし(男と)上手くいきそうなら、キスなんてさせないだろう?」
女性の気持ちをわかったように話すハイネを、カガリは小さく笑った。
ハイネは突然カガリを強く抱きしめた。
「ーーだったら俺と付き合おう。いいよな!」
「‥‥強引だなーー」
「俺がカガリを幸せにする。約束する」
「////ハイネ‥‥」
「カガリが好きだ、愛してる」
「//////‥‥」
カガリはハイネの勢いに心動かされたのか、手をハイネの背中に回した。
「////付き合うのも悪くないかもな‥‥」
そう答えるとカガリは抱きしめる腕から離れてハイネの顔をはにかみながら見つめると言った。
「////よろしくお願いします」
ハイネはカガリの可愛さに痺れた。そしてたまらず、カガリに腕を伸ばして抱き寄せると、口づけた。昨日の触れるだけのキスではなく恋人同士がするような深い口づけだ。
ハイネの片手がカガリの後頭部に回されると、口づけは更に深く、濃厚な口づけへと変わっていった。
暫し口づけを堪能し、ハイネはカガリの唇から惜しむようにゆっくりと離せば、互いの口からは熱い息が漏れていた。
ハイネはカガリのキスの上手さに驚かされた。ーーまさかあのカガリがこんなにもいい女になっていたなんて、益々手放したくないと思えた。ハイネは見えない男の影に嫉妬すら覚えた。
抱き合えばどんな女の顔を見せるのか、そう考えただけで下半身が暴走しそうになった。
「ーーカガリを今直ぐに抱きたい」
「//////あっそれはまだ‥‥」
「じゃ、ここで抱く」
「‥‥冗談でも怒るぞ!」
「ならホテルへ行くか?カガリの好きな方に任せる」
「‥‥任せるって、もう抱くことが前提なのか?」
「そんなに嫌か?」
ハイネに真顔で問われ、カガリは戸惑う顔を見せた。そして、少し俯くと考えた。
ーー付き合うのだから、遅かれ早かれ、////そうなる‥‥拒む理由はない。
カガリは覚悟を決めて顔を上げると、ハイネを見て言った。
「//////ホテルで」
「了解!」
走る車の中、カガリは正面を向いたまま、膝の上で両手を重ねて強く握った。
ーーハイネのことは好きだ、だからこれでいい。もうアスランのことは考えない‥‥。
そう心の中で呟くも、カガリは不意に自分の唇を指先で触れて思い返した。
ハイネと熱い口づけを交わしたはずなのに、どうしてアスランの時のように心がときめかなかったのだろうか?
**
「ここ高いぞ!」
カガリが驚く顔を見せた。
「知ってる。俺の本気度を見せたいから奮発してこのホテルに決めた」
「無理しなくても‥‥」
「いいんだ。俺がそうしたいんだから」
<ホテル>
エントランスから中に入れば、ハイネがカガリに言う。
「受付してくるからそこのソファに座って待ってて」
「‥‥う‥‥うん」
ハイネは一人でフロントへ向かった。
「ーー2名様でご予約を頂いておりますハイネ・ヴェステンフルス様ですね。ありがとうございます。ではこちらにご記帳をお願いいたします」
**ーーーーー
<昨日カガリと別れてからのハイネ編>
家に着いて、ふと内ポケットに何か入っている物に気付いた。あっ、とそこで漸く思い出したーー。
それは数日前に先輩から貰ったラーメンの無料券だったがすっかり忘れていた。その無料券は二枚、期限は明日までだった。そこである計画が浮かんだ。
思い立ったが吉日ーー。
期限の明日に連絡を入れて無料券でカガリを誘い出す。カガリの性格からして断らないだろう。そして、早々に抱くーー。だから、車でカガリを迎えに出る。車ならそのまま車内でやれるし、ホテルがいい、というならホテルもありだ。‥‥先に予約を入れておくか?平日だから満室はないだろうが、もしもに備えて先回り(予約)は必要だよな‥‥。
告白して速攻でカガリにフラれたがキスは許した。だから脈はある。そこで思ったのが男の影だ。カガリには気になる男がいる、と言うことだ。その男をカガリの中から消し去るにはカガリを抱くこと。これが一番手っ取り早い手段だ。
兎に角カガリと既成事実を作ることが重要だ。あとはゆっくり二人で愛を育んで結婚する////。
二人はエレベーターに乗った。
高級感漂うエレベーターは外側に向いた方の壁が一面ガラス張りになっており夜景が一望出来た。ちなみに内側にあるエレベーターは外から見られることのない仕様となっている。
ハイネはカガリの腰に腕を回し、自分の方へ引き寄せた。
カガリはハイネに委ねるかのように寄り添った。そうしながら自分に暗示をかけるように心の中で呟いた。
ーー私はハイネが好き、ハイネが好き、と。
カガリはその上をどこか重い足取りで歩いた。そして、辿り着いた部屋のドアの前で二人は立ち止まった。
部屋の鍵(カード)を持つハイネがドアを開けてカガリに、どうぞ、と言う態度を見せた。だがカガリは足が竦んで動けなくなった。
その様子に気づいたハイネはカガリの背中に腕を回すと、一緒に入った。
そしてドアが閉まり、部屋の中は二人だけの世界となった。
2023年6月2日 修正済