闇もどき部屋へようこそ
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カガリは驚きながらもアスランの声に導かれるようにパウダールームから出ようと足を一歩踏み出した。しかし、鏡に映った自分の姿を見て立ち止まった。
ーー濡れた髪、濡れたシャツ、挙句に下はショーツのみだ。
こんな姿を見せたくない。見たらなんて思う?カガリは足が竦んで動けなくなってしまった。
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‥‥カガリの知り合いか?
ハイネは男をチェックするかのように見入る。
整った顔立ちは、俺に劣らずモテる男ーー。見た感じは真面目なエリートサラリーマン。だがいきなり客室に侵入、どう考えても尋常ではない。大体、どうして客室の鍵を持っている?ホテル側が宿泊している客室の鍵を簡単に渡すはずがない。どういうことだ?ーーそもそもこの男の人を見下すような態度が気に食わない。
ハイネは、フーと息を吐くとどこか余裕な態度を見せ、男に話しかけた。
「おまえが探しているカガリは、もう俺の女だから邪魔しないで大人しく帰ってくれるか。今彼女はシャワールームにいる。男ならこれがどう言う意味かわかるだろう?」
ハイネは口元を上げた。そして、パウダールームの方を向いて話しかけた。
カガリは迷ったが、あのアスランのことだ遅かれ早かれこのドアを力ずくで開けるだろう、そう思いここから出ることにした。
しかし、出て来たカガリはアスランの顔をまともに見ることが出来ず、俯いたままだった。
ハイネはカガリの姿を見ながら言う。
「ご覧の通りだ。今、二人でシャワーを浴びて、じゃれ合っていたから、折角着替えた服まで、また濡らしてこの有様だ」
ハイネに好き勝手な事を言われ、カガリは内心焦った。
ーー違う!と言いたかったが、声に出来なかった。何か言ったところでアスランはあの時のように何も信じてはくれない‥‥。自業自得と言うべきだろう、情けなくて悔しくてカガリは唇を噛み締めた。
アスランは俯くカガリを黙って見つめていた。
ハイネは口元を上げ、どこか自信に満ちた態度で、男がどう動くか、様子を窺うかのように見つめた。
アスランはハイネのことをスル―するかのように、カガリに言った。
「──来てやった。だから文句はないだろう。さっさと服を着ろ、帰るぞ‥‥」
その言葉に驚き、カガリは顔を上げ、ようやくアスランを見た。
ハイネも流石に驚いた。まさかそう出るとは予想外だった。
アスランは落ちていたカガリのパンツ(ズボン)を拾い上げて、カガリに歩み寄ろうと足を向けた。
しかしハイネが慌ててカガリの前に立ち塞がった。黙って見送る訳には行かないし、大体それはどこか可笑しいだろう。
ハイネが怒った感情を露に、アスランに言った。
「おまえ、何を考えている?カガリを連れ出そうなんて可笑しいだろう!」
アスランは、ふっと冷たい笑みを浮かべ、ハイネに言葉を返した。
「可笑しいのは貴様の方だろう。抱いたからなんだと言う、それでどうして貴様の女と言える?」
男の鋭い視線の気迫に押されて、ハイネは言葉を失った。いつの間にか立場が逆転されたような屈辱を味わった。相手の男の方が一枚上手と言うべきかーー。
だがハイネも引けない。男の意地‥‥いや百戦練磨の意地だ。少し引き攣った笑みを浮かべると言い返した。
「──残念だな。カガリは俺を選んだ。だから俺に抱かれた」
カガリは驚いた瞳でハイネを見るが、何も言わずに俯いた。抱かれてないと否定した所でアスランは信じないだろう‥‥それに始めは、確かにそのつもりでホテルまで来たことは事実だ。ハイネの言ってることは全部が嘘でもない。
アスランは何も言わず、冷たい視線をハイネに向けたままだ。
ハイネはカガリに視線を移し全身をゆっくり見て、そして、アスランに視線も戻し、口元を上げどこか余裕な態度を見せ、話し出した。
「カガリが自ら脱いで、俺に全てを曝け出してくれた。だから俺はそれに応えた。カガリの傷一つない滑らかな白い肌を、俺の愛で埋め尽くしてやった。そう言うことだ。俺たちは愛し合っている。おまえはもう関係がない」
塞ぎ込んでいる今の状態ならカガリは何も反論しないと分かって、ハイネはカガリが自ら脱いだように伝えた。それはカガリがハイネを選んだことを強調するためだ。そして、諦めの悪い傲慢なこの男にショックを与え、はっきり分からせるためだ。
アスランは眉を顰め、低い声で不意に問いかけた。
「カガリの肌はどこにも傷がなく綺麗だったのか?」
ハイネは、男の問いかけに疑問を浮かべるも、──まあいい、後ひと押しすれば、仏頂面して帰って行くだろう、と思いそれに答えた。
「ああ、そうだ。明るい下で、カガリを丹念に愛しながら全てを見た。傷一つない綺麗な肌だった。胸や首筋そして肩から伸びる細い腕は白くて滑らかでキレイだったな‥‥」
ハイネは意気揚々と話し、勝ち誇ったかのように口元を上げアスランを見た。
カガリは全身が真っ赤になりながら、両手で耳を塞いだ。
アスランはハイネを見据えて言葉を口にした。
「──ふ~ん、そうか。貴様が話すカガリと目の前に居るカガリとは別人のようだな‥‥」
ハイネは何を言っているんだ?と言う眼差しをアスランに向けた。
アスランは遮るように立つハイネを押し退け、カガリに歩み寄った。
ハイネはアスランの肩に手を掛け、動きを止めようとするが、アスランに振り払われた。しかも払いのけるアスランの手の甲がハイネの顔面に直撃した。
「ーーっ痛て~何する!!」
ハイネは痛いところに手を当て、アスランを睨みつけた。
「むやみに触れようとするお前が悪い‥‥」
「なんだとーー!!」
ハイネは言い返しアスランに詰め寄ろうとするも、アスランのただならぬ雰囲気に圧されてその場から動けなくなった。
アスランはカガリの背後に回った。
そう言い、アスランはカガリのシャツのボタンを半分まで外した。
カガリはその動きに顔を赤らめ驚くも、アスランの言われるまま大人しくしていた。
ハイネも黙っていられなかったが、アスランの気迫に凄まれ動けなかった。
アスランはシャツの前をずらして肩を見せた。
「貴様は傷一つないと言ったよな。だが残念なことに、カガリの肩には俺が残した歯形の痕が残ってる」
「──嘘だろう!?」とハイネは引き攣る顔を見せた。
「見えるか?この痕‥‥。かなり強く噛んだからなーー」
そう言って、アスランはその場所を舌先で舐めて口づけた。
ハイネは愕然して言葉を失った。ハイネはアスランを追い詰めるつもりが逆に自ら墓穴を掘ってしまったようだ。カガリの肩の痕を知らないと言うことは全てが嘘に繋がる。
アスランはそのまま背後からカガリを抱き締めた。
2023年9月20日 修正済