闇もどき部屋へようこそ
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
先に目を覚ましたのはアスランだった。
横でスヤスヤと眠るカガリを見れば自然と笑みが零れる。そして、まだ起きそうもないカガリの髪に指を絡ませながら目を覚ますのを待った。
カガリは自分の髪をいじる気配に気付き、薄っすらと目を開けた。すると自分を見つめる翡翠の瞳と目が合った。徐々に覚醒し、この状況が急に恥ずかしくなり、狼狽えるようにシーツに顔を埋めた。
「どうした?」
「////なっなんでもない‥‥////」
「朝だから抱いて欲しいのか?」
「──ちっ違う////!」
カガリは慣れない状況に照れくさかった。
「おはよう」
そう返すと、アスランはカガリのおでこにキスを落とした。
カガリは小さく息を吐くと、言いづらそうに言葉を口にした。
「‥‥あの、ごめん。キャバクラで働いていたこと‥‥」
「何か理由があったんだろう?」
「‥‥一人でも‥‥都会なら直ぐに仕事が見つかって、知らない街でもなんとかやれると思ってた‥‥けど現実は甘くはなかった‥‥働いていたのは一か月ぐらい。そこで客として来ていたハイネと知り合ったんだ。ある日ハイネに、『自分を大切にしろ!』って、真顔で叱られて‥‥それで辞めたんだ‥‥」
カガリはハイネの名前を出してしまい気まずいと思ったが、アスランはハイネのことはスル―したようだった。
アスランは静かにカガリを抱きしめた。
「もうわかったから気にするな」
カガリは抱きしめる腕の中で小さく頷いた。
アスランはふと思い出したことを唐突に言い出した。
「ーーマンションを出て行くと言ったあの時、カガリは誰を想って俺に抱かれていた?」
「えっ!?(今更そのことを聞くのか?)////‥‥アスランに決まっているだろう////!」
その答えに、アスランは満足そうな笑みを浮かべた。
カガリも気になったことを聞いてみた。
「////私を抱く時、どうして夜じゃなくていつも朝だったんだ?」
「‥‥そうだな、改めて言われると、なんでだろうな?俺にもよくわからん。ただカガリを抱きたかった。それだけは分かる」
「‥‥‥‥」
話し終えると、アスランは起き上がり会社へと行った。
カガリも起き上がろうとしたが、「ーーまだ時間は早い。そのまま寝てればいい」と言われたので、アスランの言葉に甘えて二度寝に入った。
後で知ったが、エリカさんは会社を辞めたことがわかった。やりたい仕事のためにオーブへ行ったとーー。
**
<数ヶ月後のある日>
アスランは結婚式の段取りの事で、実家へ寄った。その時、ふと思い出した事をついでに父に尋ねた。聞くタイミングがずれて、すっかり忘れていた。
──どうして父が見ず知らずのカガリを俺の花嫁にすると言って喚いていたのか。少なかれ父が俺たち二人の出会いの切欠となった。そこだけは父に感謝しているが・・・。
パトリックが真顔で問うアスランに話し出した。
「彼女の優しさがレノアに似ていたからだ」
「はあ?」
咳払いをするパトリック。
「優しさだけじゃない。彼女の人柄だ。今時、あんなサバサバした娘は今時は見たことがない・・・」
「・・・・・・・・・」
パトリックはカガリと出会った日の事を懐かしむように思い出しながら言葉を口にした。
「──・・・あの日もいつものように車で会社へ向かっていたのだが、余りにも空が青かったのでな、途中で降ろさせ、わしは電車と徒歩で行くことにした。だがな、財布も携帯も何処かへ落としたらしく、難儀した」
後で分かったが、下駄箱の上に財布も携帯も置き忘れていた。
アスランは、話をする父を呆れ顔で見ていた。そうこの父はたまに可笑しな行動を取る。SPを置き去りにして一人でブラブラしたがる。見かけによらず武術は心得ているが、置き去りにされたSPの事を思うと哀れに思う。
「わしは疲れはて、植え込みの場所で座り込んでいた。こんな中年男性に声をかけて来る者など誰もおらんかった。寂しい世の中になったものだと思っていたら、彼女が声をかけてきた。その時の彼女の笑顔と気取らない性格が気に入った。気分が悪そうなわしを木陰になったベンチまで連れていってくれて、人目もはばからずに、膝枕をしてくれてな・・・」
このあと親子喧嘩が勃発したことは言うまでもない。
家(マンション)に帰ったアスランがカガリに膝枕を要求したかどうかはご想像にお任せ致します。
2023年10月6日 修正済
二人の幸せは読んで頂いた皆様にも伝わったと思いますので、お話はこれで終わりと致します。
ありがとうございました^^v