闇もどき部屋へようこそ
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<車の中>
駐車場に車を止めると、アスランは問いかけようと後部座席の方へ振り向けば、エリカが前のめりになり、そのまま二人はキスを交わした。
口づけが終われば、淡々とアスランが言った。
「それで話はなんだ?」
**
エリカから、『空港〇番の出入り口で待つ』とアスランのプライベートの携帯にショートメールで連絡があった。それは珍しいことだった。
「折角だからついでに何か食べにいかない?」
「いや、やめておく」
「わかったわ。けどマンションに寄って行く時間ぐらいはいいでしょう。大事な話があるの」
**
エリカはアスランの問いかけにどこか呆れる顔を見せる。
「何が言いたい?」
「フフフッ何でもないわ」
「‥‥‥‥?」
エリカがそこまで言うならと、アスランは車から降りて部屋へと向かうことにした。
<マンションの部屋>
エリカはある封筒をアスランに見せた。
「欠員がでたらしくて、私に声がかかったの。だから近々辞表を提出するわ」
「‥‥そうか、やりたいことがあるならいいんじゃないか」
「ーー全く引き留めようとしないんだから。少しは寂しがってくれるかと思ったのに」
「優秀なエリカが居なくなることは残念だと思うが、俺に引き留める権利はないだろう」
「‥‥そうね。他に言うことはないの?」
「身体に気をつけて頑張れよ」
そう言うと、アスランはエリカに背を向けた。
「ーー最後よ、抱かずに帰るの?」
「ああ」
ほんと女性の気持ちなんて無頓着で無関心なんだからーー。
アスランは出て行った。
**
ーー帰り道。
アスランは少し遠いが予約してあったケーキ屋へと向かっていた。そのケーキはカガリが食べたいと言っていたケーキ屋だった。そのことはすっかり忘れていたが、ある日、仕事先で出された洋菓子のゴロを見て思い出したーー。
予約の取れた日が今日だった。カガリが食べたいと言ったケーキは販売日が決まった日しか店に並ばない店のオリジナルだった。唯一助かったのはその店が遅くまで開いている店だったことだ。予約さえしておけば、売け取ることが出来る。
ケーキを車に乗せ、マンションへ向かうさなか、どこか浮かれている自分に気が付いた。ーー俺は子供(ガキ)か?と自分で突っ込み、そんな自分にどこか呆れながらも、アクセルを踏み込み、急ぐ自分がいた。
久々に会うカガリはどんな顔をして迎えてくれるのか、そう考えると少しでも早くカガリの顔が見たくなった。
モヤモヤして面白くないと思っていた感情は、久々に会えるカガリの事で埋め尽くされ、知らず消え去っていた。
2023年10月4日 修正済