闇もどき部屋へようこそ
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ーー助けを求める相手は来ないと分かっているのに、それ求めてしまう自分に腹が立った。
カガリはその気持ちを八つ当たりでもするかのように、アフメドの足を思いっきり踏みつけた。
「痛っ!」
アフメドは痛さに抱きしめる腕を弛めた。透かさずカガリはアフメドを押し退けた。
「人が優しくしてやってるのに、いい加減にしろ!」
怒ったアフメドは手を上げ、カガリの顔を叩こうとしたが、その手は背後から来た男に取り押さえられた。
驚くアフメドは振り返ろうとしが、いきなり顔を殴られた。そして、その勢いで背後によろけた。
アフメドからカガリを救ったのは、ハイネだった。
驚き困惑顔を見せるカガリをハイネは自分の胸に抱き寄せ低い声で怒鳴った。
「貴様~!!人の恋人に何する!!」
そう言われ、アフメドは驚いた顔を見せた。
「今度、俺の女に近寄ったら、只じゃおかないからな!!さっさと失せろ!」
ーー八つ裂きにしてやろうか、クソやろうが!と罵るような怒りの形相を浮かべ、相手を睨み脅した。
アフメドはおっかなびっくりしながら一目散に逃げだした。
ハイネはその姿を見送ってからカガリに話しかけた。
「大丈夫だったか?まさかと思ったが、追いかけて来て正解だったな」
カガリは立ち去ったアフメドに安堵すると同時に抱きしめるハイネの腕から離れた。
「ありがとう。助かった」
「途中で二人を見失って焦ったが、間に合ってよかった」
ハイネは安堵の顔を見せた。
カガリは気になったことをハイネに聞いた。
「‥‥けどどうしてここに?」
「──ええっと、それは‥‥営業の接待でこの近くまで来ていたんだ。それが終わって帰ろうとしてたら、走るカガリの姿を見てさ。他人の空似かと思ったが、嫌な予感がして急いで後を追ったんだ」
ハイネは咄嗟に嘘を付いた。ーー本当はホテルで女性と会っていた。その女性は既婚者で夫の転勤が決まったことから、二人の関係を終わらせた。その帰り道だった。
カガリは何の疑いも持たないまま、ハイネの言うことを鵜呑みにした。
「そうだったのか。偶然とはいえ助かった。ありがとうな」
ハイネはぎこちない笑みを浮かべた。
そして、ハイネが家まで送ると言って、二人は歩きだした。
カガリは道に迷ってしまったので、送ると言われ正直助かった。だがここから最寄り駅までをお願いした。
ハイネは家まで送りたかったがここは素直に従った。あまり強引だと嫌われると思ったからだ。
歩きながらハイネにさっきの男のことを問われ、カガリは小さくため息を吐くと話し出した。
「‥‥少しの間付き合ってた人。偶然会って、それでこうなった」
「そっか」
ハイネはそれ以上のことは聞かなった。
二人は昔の店でのことや、今の事を話しながら歩いた。そうしているうち、駅が見えて来た。
「今日は本当にありがとうな。色々と助かった」
そう言ってお礼を言うカガリを、ハイネはいきなり抱き寄せた。
「‥‥怖い思いして、本当は泣きたいんじゃないのか?」
「ハイネ・・・?」
「泣けばいいぞ。俺、見てないから」
ハイネはカガリのどこか落ち着かない様子に気がつき、優しい言葉で問いかけた。
カガリの様子がどこかおかしくなったのは、ここから見える公園の葉桜の木を見て嫌なことを思い出したからだ。
カガリは優しい言葉を掛けられ、ハイネの胸の中で泣きそうになったが、ぐっと堪えてハイネの胸から離れた。
「‥‥ありがとう。けど大丈夫だからーー」
カガリは笑みを浮かべた。
ハイネは虚勢を張ったカガリの姿に、愛しさを感じた。
「えっ・・・?」
「俺と付き合わないか?カガリのことが好きだ‥‥」
「////////!?」
「今誰かと付き合っている?」
「////いないけど。ーーごめんなさい」
そう言ってカガリは頭を下げた。
「へえっ!?」
この俺が速攻で振られた?告白するのが早かったのか?
「今付き合っている奴がいないんなら、取り合えず付き合ってみると言う選択もあると思うんだけど」
「ありがとう。ハイネの気持ちは嬉しいけど、兎に角今はごめんなさい」
カガリの態度は完全に自分を拒否した、とどこか焦るハイネがいた。
「‥‥あっだったら食事に誘うのはあり?」
「あっうん」
「じゃ今度一緒に食べに行こう。メール入れるな」
「うん。わかった」
「これだけ覚えてて。俺、カガリのこと本気だから・・・」
真面目な顔して伝えると、ハイネはカガリに背を向けて帰って行った。
ーー今日は引くけど俺はあきらめが悪いんだ。
2023年5月14日 修正済